安全支援スマホアプリ Project #03
世界では、毎年119万人もの人が交通事故で亡くなっています(2023年 WHO調べ)。その中でバイクの交通事故が占める割合は大きく、私たちは、近い将来、バイクの交通事故死者がゼロにできる日を目指して、本田技術研究所と共同でバイクの事故を減らせる技術の社会実装に取り組んでいます。
その技術は、高級なバイクに搭載するだけではなく、庶民の足であるスクータでも使えるようにしてより多くの利用者に届けられることが重要です。そのため、バイクにスマートフォンとカメラを装着する構成を選んでいます。バイクの周囲の状況をカメラで捉え、その映像をスマートフォンのアプリがAIを用いて解析し、リスクがあるシーンでは、ライダーにリスクを知らせるためのアラートを出します。リスクの種類には、前方の見落としに起因するリスク(出会い頭事故リスク)や、後方の見えにくさに起因するリスク(後方車追い抜き時の衝突リスク)などがあります。図1に、試作中のシステムが動いている様子を示します。
図1:安全支援スマホアプリの画面表示例
近年のスマートフォンの性能は飛躍的に進歩していますが、それでもバイクに装着して交通リスクを推定させるには、たくさんのチャレンジが必要です。リスク要因に高速に反応するためには、クラウドとの通信による遅れがあってはなりません。そのため、AIの処理はスマートフォンの中で実行できるように軽量化が必要です。スマートフォンによる外部カメラの制御や、今後はリスクを知らせるための外部機器の制御も必要になっていきます。安全支援のためのプラットフォームになるよう念頭に置き、綿密なプロファイリングをしながらチューニングし、高パフォーマンスのシステムを実現できるように、我々は、AIエンジニアとして、そして、ソフトウェアのプロフェッショナルとして、このアプリケーションの開発に取り組んでいます。図2は、スマートフォン上のアプリケーションの中で処理されるパイプラインを示したものです。
図2:安全支援スマホアプリのパイプライン
また、国によって異なる交通事情、車やバイクの実施的なルールなどにも対応していく必要があります。また、スマートフォンと外付けカメラの組合せの適用範囲は広く、タイの学会では、TukTukに本システムを取り付けたデモも実施し、たくさんの方がデモを体験されていきました (図3)。
私たちは、少しでも早く、世界の人々の安全性を向上する安全支援スマホアプリを届けられるように、開発に取り組んでまいります。
図3:TukTukに安全支援スマホアプリを取りつけたデモ
(SICE FES 2025、チェンマイ)
プロジェクト概要
バイクの安全性を向上するためのスマートフォンアプリケーションを開発するプロジェクトです。バイクにスマートフォンとカメラを取り付け、このアプリケーションを動かすだけで、ユーザーが気付かない危険な状況をアラートで知らせるシステムです。
解決したい社会課題・背景
世界の交通事故死者数は1年に120万人を超え、その人数を減らすことは重要な課題です。その中で大きな割合を占めるバイク運転者の死亡事故を減らす必要があります。
技術的アプローチ・研究内容
画像からAIによる他車認識をして、他車の動きベクトルから、リスク状況を判定します。通信ができないところでも動かさなくてはならないためにスマートフォン内で全て処理する必要があり、また、PCやクラウドと比べると計算パワーが足りないことから、綿密にプロファイリングをしながら効率的な処理をするように工夫しています。
活用シーン・導入効果
スマートフォンを使うことのメリットは安価に安全支援機能を提供できることです。特に、アジアでは、庶民の足であるスクータで使ってもらうことを想定しているので、安価に提供できることが重要です。
主な成果・特徴
現在開発中ですが、学会では、何回かデモ展示を行っていて、たくさんの来場者に来てもらいました。2025年のタイの学会では、バイクではなくTukTukに取り付けデモを行いました。
国によって交通事情が異なるため、アジアのいくつかの国でフィールドスタディを行っています。
今後の展望
現在開発中のものですが、少しでも早く、バイク運転者に使ってもらえるように開発を進めてまいります。
学会発表実績
・JSME 第68回 自動制御連合講演会【共著】(2025年11月)
*小林 千紗,安井 裕司,岩下 龍司,高階 知巳,佐野 諭,神山 圭祐,大槻 俊和,越膳 孝方,
※上記著者のうち、下線付きで表記している氏名がWing-AI Lab所属のエンジニアです。
二輪関与事故低減に向けた AI ベース安全支援システムの研究,自動制御連合講演会講演論文集,
2025,68巻,第68回自動制御連合講演会,セッション ID 13E-1,p.739-746